フランス音楽を奏でるピアニストの第1人者であられる青柳いづみこさんと関西を代表するピアニスト、藤井快哉さん、若手精鋭の辰野翼さんによる珍しい2台6手連弾のコンサートに行きました。@西宮神戸女学院小ホール
フランスの香りに浸れるコンサート
フランス音楽研究をされているピアニストさんたちによるコンサート。ドビュッシーの音楽の楽しさ、美しさを3人の方が絶妙の調和をとりながら奏でてくださった、という印象でした。一人では成しえない大きな音楽。この3人だからこそぴったりとピースがはまったような気がしました。
辰野翼さんのドビュッシーのエチュード
辰野翼さんは、「ピアノのための12のエチュード(ドビュッシー)」をこのたびCDリリースされました。首席で卒業されたパリ音楽院での研究テーマが、ドビュッシーだったそうです。
辰野さんは、元々ご近所住まいで、桂木小学校の合唱団の伴奏もされているので、一足早くCDを聴かせていただきました。ドビュッシーのエチュードは、難易度高く誰もが弾く作品ではないと思いましたが、このCDでは美しい音楽として楽しめます。辰野さんの演奏を通して聴くドビュッシーのエチュードは、よりわたしたちと作品との距離を縮めてくれることと思います。そして、ドビュッシーのエチュードを弾く人たちにとっては、貴重な参考音源になるでしょう。
ドビュッシーの2台ピアノ「白と黒で」
第1部のもうひとつのプログラムは、Ⅰ青柳いづみこ Ⅱ藤井快哉による「白と黒で」(1915)という作品でした。
どちらもドビュッシーの最晩年の名曲で、プログラムの並べ方もおしゃれです。ストラヴィンスキーに献呈された曲だそうです。
第2部はファリャ「スペインの庭の夜」
第2部は、ファリャから始まりました。こちらはスペインの地名が各楽章に入っているのが特徴的で、場所を想像しながら聴くのが楽しかったです。(ギュスターヴ・サマズイユによる6手2台版)
第1楽章「ヘネラリーフェにて」は、グラナダのアルハンブラ宮殿近くの離宮の庭園だそうです。
第2楽章「はるかな踊り」は、アンダルシア西方のウェルバ地方のフラメンコだそうです。
第3楽章「コルドハの山の庭にて」コルドバ近郊のイスラム時代の遺跡がモデル。
そしてこちらも、お国は違えど、1915年の作品。
プログラムはこちら
ドビュッシーの交響詩「海」A.カプレ編曲
最後の、交響詩「海」のカプレ版編曲によるピアノ2台6手は圧巻でした。
この曲に関して、青柳いづみこ先生から楽しいエピソードがありました。
この楽譜は、未出版なのですが、デュランのアーカイブ所蔵に自筆譜でカプレの編曲版があるそうです。
青柳いづみこ先生はパリの国立図書館に、その「海」の楽譜があると知り、パリに行って楽譜をもらってきたそうです。ところが、後日、図書館から連絡があって、「コピーではなく原本を渡してしまったので、返却してほしい。」と言われたそうです。よく見たら、それは原本の赤い印字が押された楽譜で、パリまで返しに行かれたとのことです。
図書館が長い休暇に入る前日で、たまたま間一髪のラッキーな日に、コピーを入手してこられたとのことでした。
しかも、カプレの編曲は、手書きの楽譜だそうで、譜めくりさんがさぞ見づらいことだったでしょう、と演奏後に、ねぎらっておられました。
難解な名曲で、初演時は、指揮者がスコアを読み切れずに不評におわり、ドビュッシーの指揮で演奏されたときに初めて絶賛されたという交響詩「海」。
これ以上、音がきれいにそろった海があるだろうか、と思うくらい鳥肌ものの演奏でした。
時々指揮をされた辰野翼さんに、いづみこ先生からブラボーの拍手が贈られて、ほんとうに素敵でした。
アンコールは、グレンジャーの「緑の茂み」(2台6手)
グレンジャーはイギリスの作編曲家だそうです。耳になじむメロディーが繰り返されながら、最後のきめの音に向かっていくまで、明るいワクワク感をみんなで分かち合っているようなアンコールにふさわしい音楽でした。
ロビーにて
お友達とも偶然会えて、楽しいひとときでした。
一度で終わらせてはもったいないコンサートだと思いました。
またいつかこの3人の演奏を聴きたいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
神戸北町のしばたピアノ教室 柴田 幸代