2015年から続く、ぷちピアノランド関西主催、上杉春雄先生のバッハセミナー。バロックの時代の楽器から奏法を考える実践的なセミナーを企画しました。
この日の講座・ワークショップの目的
午前は上杉春雄先生の講義。楽器の調律に同席くださった専門業者オワゾリールの井岡さんとの対談も交えて、楽器の特性や演奏例の動画を参考に、ピリオド楽器へのアプローチがありました。
そもそも撥弦楽器とはどんな仕組みか、そしてそれぞれの撥弦楽器の特徴はなにかを学ぶことによって、ピアノの弾き方についての私たちの今までの思い込みを見直してみよう、という講座でした。
まずはピリオド楽器の音がでる仕組みを学ぶ
配布のレジメに、クラヴィコードやチェンバロ、ピアノの仕組みが詳しく説明されています。
レジメでは、打鍵のしくみから音の響き方の音型がよくわかる図が入っています。しっかりと説明を聞いてからの実践。午後からは、目の前に置かれた楽器で、実際の自分のタッチで感じてみるというワークショップでした。
ピアノはあまりにも音が簡単にでる仕組み
ネコが踏んでも音が鳴る楽器にも、といわれるピアノ。弦楽器にしても管楽器にしても、音が出るまでにたくさんの練習が必要です。あまりにも簡単に音が出るので、タッチについて無雑作になりがち、という現状があります。
そしてピアノの楽譜は、大譜表というフォームで、右手、左手の段があり、瞬間的にたくさんの音を読まなければならないので、そちらの苦労が大きいですね。タッチだけに特化して意識を傾ける時間の大切さを感じました。
クラヴィコード・チェンバロ・ピアノの順に弾いてみる
クラヴィコード・チェンバロをこの講座のためにレンタルしました。古楽器の専門業者オワゾリールさんにいらしていただき、調律にも数時間かけていただきました。1~2分短いフレーズを触って、ぐるぐる楽器を変えてタッチの違いを体験しました。
まずはクラヴィコードに触る
クラヴィコードを触ってみると、その繊細さにびっくりしました。まず音が鳴らない。そっとそっと触るだけ~と自分に言い聞かせながら、一音一音に神経集中。今度はアーティキュレーションが表現できない。一人1分~2分ずつ触りました。繊細さを学ぶには、この楽器。オワゾリールのオーナーの井岡さんも、心のひだを表現できる楽器とおっしゃっていました。強い打鍵は楽器にダメージを与えます。いかにやさしく正確に鳴らすか、ほんとうに難しい楽器でした。
チェンバロの音がなる瞬間の感触を感じる
打鍵の瞬間に底のところでコクンと抵抗ある感触と共にキラキラの音がでるチェンバロ。タッチと発音の時間差など、クラヴィコード違い違いも鮮明に感じられます。今回の体験用チェンバロは、1段のものです。クラヴィコードに比べると、鍵盤がちょっと深くて、キラキラした華やかな音。クラヴィコードよりはずっと大きな音が出て、楽器の進化を感じました。
ピアノのタッチの重さを感じる
ピリオド楽器の体験のあとで現代のピアノを触ると、まず打鍵の瞬間とは?という感覚が先に立ちます。
ピアノのアクションモデルでもタッチの体験ができました。
チェンバロの後でのピアノは鍵盤が重いです。
感覚を研ぎ澄まして打鍵に集中してみる、そしていままでとの打鍵の違い、音色の違いを感じてみる~
それが今回のテーマでした。
バッハの音楽は、楽譜からの分析も複雑だし、演奏までに考えることが満載ですが、演奏者としてはその音の瞬間瞬間に美しく相応しい音を発することが重要な作業になります。
楽譜と音楽の受け渡しする演奏者の意識について、難しさ、楽しさを味わう時間でした。
上杉先生よりまとめ
上杉先生から、各楽器を演奏集中にみなさんへのアドバイスが一言ずついただけました。オワゾリールの井岡さんからも時々、アドバイスをいただきました。
無駄な力を入れないで楽器本来の美しさを表現できること。一音一音きっちり音が聞こえてくること。音楽の横のつながりが表現できてきていること。やさしい音楽でも繊細な意識で美しく演奏できることを目指す。という、当たり前だけれど、それをきちんとやっていこう、という
まとめの言葉でした。
受講者さんの感想
第16回セミナーはワークショップ形式で、楽器の準備や配信のテストなどの準備がとても大変でした。
受講者さんからは『有意義な体験だった。』ほか、とても細やかなコメントをたくさんいただいており、主催者であるわたしたち『ぷちピアノランド関西』スタッフは、充実した気持ちで終えることができました。
みなさまのご感想は後日まとめて、ぷちピアノランド関西のWebサイトに掲載させていただきます。
次回のバッハセミナーより平均律クラヴィーア曲集第2巻です
2023年9月10日(日)は、第17回バッハセミナーです。
いよいよ第2巻に突入します。今後とも上杉春雄先生のバッハセミナーをどうぞよろしくお願いいたします
神戸北町のしばたピアノ教室 柴田 幸代