夫が図書館で借りた本。
「よかったから、返すまでに読んでみたら?」と勧められて読んでみました。
棟方志功のお話です。
実在した人物が、どのように苦難の中で大きな成長を遂げたかのお話には、ぐいぐいと引き込まれました。
ゴッホにあこがれて
夫の独創的な版画へのいちずな思いを支え続けた妻チヤの目線で描かれた棟方志功の人生が描かれています。
我流で好きな絵を描き始めた少年が、ゴッホのひまわりが載った記事に出会って、「日本のゴッホになる」決心をした日から一心不乱に芸術に打ち込む姿。
棟方志功が、自分を全投入するエネルギーに触れることができます。
妻チヤの信じる力も感動的
生活を支え、家庭を守り、夫を信じ続けた妻チヤ。
夫の性格を理解し、才能を信じるきる力。
人生の中で何が難しいって、信じることが一番難しく、信じ続けることはもっと難しい。
ひたすらに思いを信じる姿は、美しくて心を打ちます。
著者の原田マハ
原田マハは、1962年生まれの小説家です。
森美術館やMoMAでキュレーターの仕事などを経た作家です。
よく読まれる作品は、「楽園のカンヴァス」、「異邦人」「サロメ」「生きるぼくら」「たゆたえども沈まず」など、多数。
わたしは、美術の専門的な現場の風景描写が楽しく、そこにミステリーの要素もある作品に惹かれています。
「日本のゴッホ」は、「世界のムナカタに」
「日本のゴッホになる」とあこがれた棟方志功は、国際的なビエンナーレでも優勝を果たし、いつしか「世界のムナカタ」へと成長します。妻チヤの暮らしも楽になっていき、柳宗悦や、河井寛次郎らの支援があって、芸術的な交流の中でどんどん作品が認められる日がおとずれます。
油絵よりも価値が低いと考えられていた版画が、棟方志功によって、油絵を超える評価を受けるようになったことがほんとうに素晴らしいです。
棟方志功の作品が放つエネルギー量
価値ある芸術とは、圧倒的なエネルギー量があると思います。
誰もみたことがない景色への思いや、膨大な作業量が生み出すエネルギー。
チヤの気持ちに寄り添ったあたたかい文章
今までのだれかのようではない、棟方志功という版画家の人生を、そばで見たかのような気持ちで読みました。
チヤの存在を、ひまわりに例える巧さにも脱帽です。
原田マハさんの作品に今回もしびれました。
良かったら読んでみてください。
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神戸北町のしばたピアノ教室 柴田 幸代